お知らせ
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作成日:2016/06/01
★ 違法な残業で企業名公表 ★



 違法な長時間労働を行っていた会社の名前が公表されました。

 行政指導の段階で、企業名が公表されたのは初めてのことです。

 どんな背景があったのでしょう。

■  重要ポイント ───────────────────────────

 全国展開しているような企業で、100時間を超える残業が常態化していると、

是正指導の段階で企業名が公表されます。

■ 企業名が公表された会社の実態─────────────────────

 是正指導が公表されたのは、千葉市に本社がある棚卸業務代行会社「エイ

ジス」。

 1978年国内初の棚卸専門会社として設立、1996年には上場している会社です。

 国内棚卸会社唯一、日本全国に拠点ネットワークを持ち、直営50拠点、FC36

拠点、業界シェア77%。従業員は連結で約700名。

 国内のみならず、韓国、中国、タイなどにも事業を拡大しています。

 企業理念として

「お客様にプロフェッショナルとして最高のレベルの棚卸を提供する」をかか

げ、「エイジスは、人材育成企業です。エイジスの仕事は、人が居て初めて成

り立つ仕事です。人が資産の仕事ですから、エイジスは人を大切にし、人への

育成投資を惜しみません。」とうたっています。

 2016年3月期の業績(5月11日付)は連結売上高、営業利益ともに過去最高を記

録、その要因として人件費(当社にとって人件費とは仕入と決算説明会スライ

ドの音声のことば)が3.1ポイント下がり、前年比33.6%の増益となったとい

います。(会社ホームページより)

■ 厚生労働省の方針の転換───────────────────────

 労働基準監督署は労働関係法令の違反があった場合に、「是正勧告書」で改

善を勧告します。法違反ではないが違反が疑われることが確認された場合、「指

導票」を出して、改善を指導することもあります。

 あくまでも是正を目的とする行政指導なので、会社名が公表されることはあ

りませんでした。

 しかし厚生労働省は昨年5月18日、以下の方法で長時間労働対策をすると発

表しました。

「長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改

善を促すため、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業

場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な

早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。」

■ 公表の対象基準 ────────────────────────

 厚労省は以下のいずれにも当てはまる事案について指導・公表の対象とすると

しています。

1 社会的に影響力の大きい企業。具体的には複数の都道府県に事業場を

 有している企業

2 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、「一定期間

 内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

 違法な長時間労働:労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認めら

れ、かつ、1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。

 相当数の労働者:1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場

の4分の1以上の労働者において違法な長時間労働が認められること。

 一定期間内に複数の事業場で繰り返されている:概ね1年程度の期間に3か所以

上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

■ エイジスの実態 ────────────────────────

 株式会社エイジスの4つの営業所でこの1年間に4回是正勧告を行ったものの改

善がされなかったため公表でした。

 エイジスでは4事業場(千葉県外に所在するものも含む)で合計63名の労働者

が1か月当たり100時間を超える時間外・休日労働を行っていました。

 1か月当たりの時間外・休日労働の最長時間数は197時間でした。

 5月19日、千葉労働局長は株式会社エイジス代表者に対し、違法な長時間労働

について、是正勧告書を交付、公表しました。

 設立以来最高の売上高、営業利益の数字の裏には、皮肉にも人件費の抑制、

違法な長時間労働があったということになるでしょう。

 厚労省の公表基準の発表からちょうど1年後の公表となりました。

■ 違法な長時間労働とは────────────────────────

 法定の労働時間を超えて労働を命じるには36協定の提出が必要で、この協定

を出さずに残業を命じることは長時間の残業でなくても「違法」となります。

 また、残業時間に応じた割増賃金を支払わなければ、「違法」です。

 

 逆にもし、「3月と5月は労使の協議を経て120時間までの時間外労働を命ず

る」という特別条項を付けて36協定を締結、届け出をすれば、その範囲で100

時間を超える時間外労働があっても、「違法」とはいえないリクツです。

 今回公表の報道発表資料では36協定の締結については触れず、労働基準法第

32条違反(週40時間を超えて労働させてはならない)が認められたという表現

になっています。

■ 月100時間の残業 ────────────────────────

 月100時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者が申し出

た場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。医師から意見を聴

取し、適切な措置を実施しなければなりません。

(安全衛生法の改正、平成18年4月1日から施行)

 精神疾患を発病した場合に長時間労働がある場合、業務との関連性が問われま

すが、労災の認定基準として

「発病直前の3か月間連続して1月あたりおおむね100時間以上の時間外労働を

行った場合」は業務との関連性が濃く疑われる「強」と評価されます。

(平成23年12月精神障害の労災認定基準)

 残業100時間が継続してはいけない、そのことが強化された今回の企業名公表

ともいえそうです。

■ ハローワークでの新卒求人は不受理───────────────────

 今年の3月1日以降法令違反等をしている企業の新卒者向けの求人票は受理さ

れなくなりました。

 その中に、「1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている

場合」「違法な長時間労働を繰り返している企業として企業名公表された場合」

があります。

■ 企業名公表と罰則は違う ──────────────────────

 公表されることにより、ダメージは少なくないと思いますが、労基法の違法が

あったからといって、経営者や役員がすぐに逮捕されることはありません。

 度重なる是正指導に従わない、是正したという報告がウソであったような場合に、

書類送検され、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)に問われる

ことになります

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