作成日:2015/10/01
★ 最低賃金が上がります! ★
この秋大幅に最低賃金が上がります。
最低賃金はなぜあるのでしょう。
守らないとどんなことになるのでしょう。
■ 重要ポイント ───────────────────────────
最低賃金は労働者の保護のために、つくられたもの。
最低賃金に満たない賃金の労働契約はその部分について無効となってしまう。
違反すると罰則もあり、使用者は順守が強制されている。
■ 東京は907円に ─────────────────────────
今回の最低賃金の引き上げは過去最高の引き上げ額で、最低賃金が一倍高い
東京都では907円、2番目が神奈川県で905円になります。
最低賃金が一番低いのは693円の鳥取、高知、熊本、大分、宮崎、長崎、
沖縄です。
東京との差は214円にもなります。
新潟は715円から16円上がって731円になります。
■ ここ数年の上昇額は大きい ─────────────────────
新潟県の最低賃金のここ数年の数字を見てみましょう。
平成24年に689円、25年に701円、26年に715円そして27年の731円です。
気をつけていないと知らずに違反していることにもなりかねません。
■ 最低賃金って ───────────────────────────
最低賃金制度とは、国が使用者に賃金の最低額を定め、守ることを強いる制
度です。
賃金は人としての生活のために最も重要な労働条件です。働いてもその賃金
が安すぎて生活できないようでは困ります。国は最低賃金法という法律を作り、
労働者が生活できるよう保護しているのです。
■ 労基法と最賃法 ──────────────────────────
労働基準法の28条には「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定める
ところによる」とあります。
最低賃金法は第1条で法の目的を「賃金の低廉な労働者について、賃金の最
低額を保証することにより、労働条件の改善を図ること」「労働者の生活の安
定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経
済の健全な発展に寄与すること」と定めています。
■ 最低賃金に含まれる賃金 ──────────────────────
所定労働時間または所定労働日に支払われる賃金が最低賃金を上回っていな
ければなりませんが、除外されるものがあります。
臨時に支払われる結婚手当などの慶弔金や、時間外勤務手当は除外されます。
そのほか、精皆勤手当、通勤手当、家族手当は最低賃金の対象となりません。
通勤手当を払っていてもそれは含めずに、最低賃金を払わなければならないと
いうキマリです。
■ 最低賃金額と生活保護 ───────────────────────
最低賃金法は、地域の実情を考慮し、都道府県ごとに、労働者が健康で文化
的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護にかかる施策との整合
性に配慮するものとすることが求められています。
最低賃金が生活保護水準を下回る逆転現象は、平成26年度に初めて全国的
に解消されました。
■ 最低賃金はどのようにして決められるのか ──────────────
中央最低賃金審議会から示される引き上げ額の目安を参考にしながら、地方
最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)
での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申し出に関する手続きを
経て、都道府県労働局長により決定されます。決定は公示され、公示の日から
30日を経過した日に効力を生じます。
都道府県により、いつから適用になるかは少し違いますが、新潟県の平成
27年の最低賃金の効力の発生日は10月3日です。
■ 最低賃金の適用に例外はないのか ──────────────────
最低賃金はパートタイマーやアルバイトなどであっても例外なく適用されま
す。外国人労働者にも適用されます。
一般の労働者と労働能力や業務の態様が異なるために、最低賃金を一律に適
用するとかえって雇用機会を狭める可能性があると考えられている次の者につ
いては、労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額の特例
が認められています。
(1) 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方
(2) 試みの使用期間中の方
(3) 基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者
(4) 軽易な業務に従事する者
(5) 断続的労働に従事する者
■ 1カ月の労働時間が違う時、最低賃金はどう考えるのか──────────
労働時間の多い月と少ない月がある1年の変形労働時間を採用している場合、
最低賃金は一番労働時間の多い月に違反のないようにしなければならないので
しょうか。
たとえば1年変形をとっていて、1日8時間25日働く月(労働時間200
時間)と、1日8時間18日働く月(労働時間144時間)があった場合を考
えてみます。
最低賃金731円で200時間ならば146,200円で、144時間ならば
105,264円と開きが出てしまいます。
この場合、「月によって定められた賃金については、その金額を月における
所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、一年間におけ
る一月平均所定労働時間数)で除した金額」という施行規則がありますから、
平均の所定労働時間が仮に173時間であれば、月給を126,463円
(731×173)以上に定めて支払っていれば、違反はないことになります。
■ 出来高払いと最低賃金 ───────────────────────
出来高払いの保障給(歩合制など)にも最低賃金は適用されます。
完全歩合制をとり売上額に応じて賃金を払う労働契約で、8時間働いたのに
全く売り上げがなかった場合でも最低賃金に約束の所定労働時間をかけた賃金
を支払わなければなりません。
■ 最低賃金に違反すると ───────────────────────
最低賃金のことを知らずに、労使双方が合意の上で労働契約を結んでいたら
どうなるのでしょうか。
その場合、法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものと
みなされます。最低賃金まで引き上げた契約に変更されてしまうのです。
最低賃金額未満の賃金しか支払っていなかった場合には、最低賃金額との差
額を支払わなければなりません。
最低賃金額以上の賃金額を支払っていない場合、事業主は罰則(50万円以下
の罰金)が課せられます。法はこのような形で、最低賃金の順守を強く求めて
います。