作成日:2012/01/16
★ 1年単位の変形労働時間制の届出は忘れずに! ★
「職安に求人申し込みに行ったら変形労働時間制の届けを出しているかと聞かれたのですが」と電話。
職業安定所を通じての求人の場合、求人申込書に職種や就業時間、休日を書いて申し込みをしますが、最近、どのような求人なのか労働条件を明確にしないと受け付けてもらえなくなっています。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
1年単位の変形労働時間制を採用するには、協定を結ばなければなりません。
この協定は、監督署に届出をすることで免罰的効果があります。
■ 1年変形の労働時間制は届出が必要+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
変形労働時間制とは、忙しい時期の所定労働時間を長くし、ヒマな時期の所定労働時間を短くして、1週40時間という法定労働時間に納める制度です。
1年単位の変形労働時間制の場合、協定を結び、労働基準監督署に届出をしなければなりません。
■ 届出をしていないと・・・+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
お尋ねがあった会社は社長さん、専務さんと従業員が3人の会社です。
日曜日と祝日、年末年始、8月半ばの夏季休暇が3日ほどあります。土曜日は3月と9月が忙しいので、土曜日は毎週出勤ですが、それ以外の月は土曜日も休みです。
年間休日は毎年105日〜107日で、従業員には周知が図られたうえで実施されていました。ただ、監督署に届出はしていませんでした。
1年単位の変形労働時間制は、労使協定を締結し、労働基準監督署に届出をしなければなりません。労使で納得していたとしても、届出がないと違法ということになってしまいます。
■ 届出の内容は+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
季節によって業務の繁閑がある会社には、1年単位の変形労働時間制は大変適した制度です。
1年単位の変形労働時間制を採用するにあたっては、労働者の過半数を組織する労働組合(このような労働組合がない場合は過半数代表者)との間で、次の5項目について定め、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。
(1)対象労働者の範囲
(2)対象期間(1か月を超え1年以内の期間に限ります)及び起算日
(3)特定期間(特に業務が繁忙な期間のことで、定めないことも可能です)
(4)対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間(特例あり)
(5)労使協定の有効期間
■ 10人未満でも+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
10人未満の労働者数の事業場では就業規則の届出義務がありません。
けれども、1年単位の変形労働時間制を採用するには、小さな規模の事業所でも届出をしなければなりません。
1年単位の変形労働時間制という名称ですが、対象期間は1年が最長ということであって、1か月を超え1年以内の期間の変形をいいます。3か月、4か月、半年などの対象期間とすることもできます。
■ 1日の労働時間と休日数 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
1日8時間の労働時間であれば、年間の休日が105日で法定の労働時間を満たします。
年間の休日105は確保できないが、午後3時には休憩を取ってもらっているというのであれば、その休憩時間をひいて1日の所定労働時間を7時間45分とすることもできます。
7時間45分の労働時間であれば年間に付与しなければならない休日数は96(うるう年の場合は97)、7時間30分の労働時間であれば87(うるう年は88)となります。
今年はオリンピックイアー、うるう年です。
8時間労働で105日の休日ならうるう年でも105日で大丈夫ですが、所定労働時間により休日数を変えなければならないこともあります。
また、1年間の労働日数の上限は280日と決められています。1日7時間25分の労働時間であれば年間の休日84日(=労働日数281日)で法定労働時間の枠内に納まりますが、休日数で認められません。
■ 求人申込書はどうなっているか+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
職安の求人申込書の書き方サンプルを見ると、就業時間の欄の注意事項として、以下のように書いてあります。
『週所定労働時間にご注意ください。必要に応じて就業規則や各種届出の内容を確認させていただく場合があります。』
1年単位の変形労働時間にかかる労使協定は、免罰的効果を有する大事な協定です。
毎年 労使で協定し、監督署への届出を忘れずに行いましょう。
■ 職安の業務、監督署の業務について+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
1年単位の変形労働時間制を採用するには前掲の5項目を定めた労使協定を結ばなければなりません。その労使協定を監督署に届出ることで、処罰を免れることができます。
労使協定が締結されていれば有効に1年単位の変形労働時間制を採用しているものと認められ、届出をしていないから労使協定の効力がないということにはなりません。(労働基準法コンメンタールより)
監督署に協定を届け出ていない事業所に対し、求人申し込みは受け付けませんという職安の取り扱いには大きな疑問を感じます。
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■ あとがき
職安、監督署、均等室、年金事務所など、社会保険労務士の業務にかかわる役所はいろいろあります。
それぞれの職務権限を逸脱しないで、職務を行ってほしい、相談にのってほしい切に思います。