作成日:2011/11/01
★ 管理職を考える ★
御社ではどのような人を管理職としていますか。
未払い残業代でもめることがない賃金の支払いをしていますか。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
管理職だから残業代なしは通らないことが多い。
基本給をおさえ、役職手当を思い切り大きくすることでトラブルを防ぐことができる。
■管理職の一般的な意味+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
会社では、課長・部長などの役職名で部下を持ち、その部下の労働を管理している人を管理職といっているかと思います。
一般社員とは違ってその組織のエライ人。だから管理職手当(役職手当)がついて残業代は支払われていない、そんなイメージではないでしょうか。
■ 労基法上の管理職とは+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
労働基準法では、労働者が残業すれば残業代を支払わなければならないキマリです。
休日出勤があった場合にも割増賃金の支払いは必要です。
ところが、例外的に労基法41条2号で「監督若しくは管理の地位にある者」には、労働時間等の規定を適用しないといっています。どんなに遅くまで残業しても、休日に働いても残業代の支払いをしなくてよいことになります。
■ 名ばかり管理職問題+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
平成20年1月28日、マクドナルドの店長が、割増賃金の支払いなどを求めた裁判で、店長が「監督若しくは管理の地位にある者」にあたるかどうかが争われました。
裁判所は管理職としての実質的な権限がないにもかかわらず、店長を管理職として扱い、長時間労働を強いたとして会社の責任を問い、マクドナルド店長に未払いの残業代を支払うよう命じました。
その後マクドナルドは店長を非管理監督者に就業規則を変更しました。
紳士服販売チェーン店も店長に残業代を支払うというような動きが続きました。
■ 労基法の管理職かどうかの判断要素+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
判例などによる「管理・監督者」の具体的な判断要素はつぎのとおりです。
- 会社の経営方針を決定する、役員会等に出席しているか否か
- タイムカードなどで会社から管理されておらず、出退勤に裁量権があ
- 職務の重要性にふさわしい、相応な役職手当が支給されているか否か
- 管理下にある部下の人事権(採用、昇進、配置など)を有しているか
- 全社員における、管理監督者の割合
- 仕事の内容が、管理監督者としてふさわしいものか
(一般社員の穴埋め的な仕事を常態的に行っていないか)
■ 管理職と組合+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
管理職になると組合に入れないとよく言われます。
「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(労働組合法3条)であれば、労働組合を結成・加入できます。ほとんどの管理職も該当するのです。
ただ、同法2条但し書きで使用者の利益代表者が参加する労働組合には、労組法による保護を与えないと定めています。これを受けて多くの労働組合が組合員の範囲を限定し、これを会社との間の労働協約で定めています。
労働組合員でなくなった課長や部長などの管理職は、組合と経営陣の板ばさみになって言いたいこともいえないようなことがおきることになります。
■ 管理職ユニオン+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
バブル崩壊後のリストラでは中高年のホワイトカラー管理職が解雇などのターゲットになりました。その頃、管理職が個人加入できる管理職ユニオンが結成されていきました。
マクドナルド事件判決のあと、東京で名ばかり店長が団結、東京管理職ユニオンなどが合同で集会をもったりしました。
名前だけの管理職が、会社に不満を持って管理職ユニオンに駆け込んだときには、「管理職なんだから残業代は払わないキマリ」という会社の主張は通らないでしょう。
■ 役職手当の払い方+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
困ったことにならないための給与の払い方をご提案します。
基本給255,000円、月の労働時間が170時間の会社があるとします。
時給は1,500円、残業代1時間分は1,875円です。
1か月40時間の残業があると75,000円です。
課長になって残業代がつかなくなるのであれば、少なくとも75,000円以上の役職手当とすべきでしょう。
課長の給与明細 基本給 255,000円
役職手当 80,000円(42時間相当の残業代)
合計 335,000円
係長に手当をつけたいのであれば、係長は残業代のつかない管理職ではありませんから、
係長の給与明細 基本給 250,000円
役職(係長)手当 5,000円
残業代 56,250円(30時間の残業代)
合計 311,250円
(実際の残業時間に応じた残業代を支払います)
※ (基本給+係長手当)を残業代の計算基礎とします。
※ 係長手当を2万円などと高額にすると、残業単価が跳ね上がります。
基本給の上限を25万円程度にすること、残業代のつかない課長職以上は8万円程度の役職手当(残業代と明記)とすることでトラブルは避けられます。
■ 30万円の基本給、3万円の役職手当で残業代なしが現状なら+-+-+-+-+-+-+-+
労基法の管理職かどうかでモメたときには、前掲の判断要素に照らして、管理職となりにくいということを覚悟すべきです。
給与総額33万円を払おうとするときに基本給を 30万円 ではなく 25万円とし、役職手当を3万円ではなく8万円(43時間分の残業代)とすればよいのです。
本人に十分な説明は必要ですが、給与支給総額で変わらないのですから、まず問題はありません。