作成日:2011/06/30
★ 雇用期間に注意 ★
「仕事を打ち切られたという患者さんの相談を受ける事がよくありますが、契約社員やパートだと仕方がないのでしょうかね?」
医療相談員からこのような言葉を聞きました。
契約社員だからと簡単に辞めてもらうことができるわけではありません。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
期間の定めのある雇用契約はその期間内については契約解消がむずかしい。
期間の長さにより、雇用保険、社会保険の加入要件にも注意が必要である。
■ 期間を定めた雇用契約とは
「これからわが社で働いてください」、というときには 雇用契約を結びます。
正社員なら「期間の定め無し」になります。
そうでないなら・・・雇用契約の期間をどうするか、とても重要な事柄です。
■ 期間を定めた契約のほうがその間は安心?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
1か月という期間を定めた雇用契約を、毎月毎月結んでいる契約社員がいるという会社があります。
解雇トラブルを起こしたくない。めんどうでも契約書を毎月結びなおすことで、長期の雇用を約束してはいないことを相互に確認している、ということでした。
解雇トラブルを起こしたくないための期間雇用だとすると、気をつけなければなりません。
民法では、契約期間の定めがあれば、その契約期間中はやむを得ない事由がなければ解消することができないとしています(628条1項)。他方、期間の定めが無ければ、いつでも契約を解消することができます(627条)。
常識と違うようですが、民法では、契約期間の定めの無い社員よりも、契約期間がある社員のほうが(その期間中は)厚く保護されているのです。
■ 期間の定めのある契約は途中の契約解消が禁止+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
長期雇用が日本の雇用慣行となる中で、期間の定めのない正社員は、めったやたらと解雇してはいけないという判例法理が確立しました。
その一方で、期間の定めのある雇用契約を結んだ人たちを、パートタイマーや契約社員、準社員などと区別して呼び、簡単に解雇できるかのような認識が広まってしまいました。
期間の定めのある雇用契約の保護については、労働契約法でも
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」(17条)
と明文化されています。
また、同法は実際は意味のないような短い期間を定めて、いたずらに何度も契約を更新することがないよう配慮することも義務付けています。(17条2項)
■ やむを得ず途中解約の場合は?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
やむを得ない事由による期間途中の解約は、その事由発生について過失のある当事者は相手方に対して生じた損害を賠償しなければなりません。(民法628条)
期間の定めのある契約を途中で解消することは難しく、その場合は、期間終了までに支払いを約束していた賃金について損害賠償請求される場合があるとお考えください。
■ 期間の定めのある契約は上限3年+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
安心して長期に働けることはイイコトなのに、期間の定めのある雇用契約をするには契約期間に上限があります。
労働基準法では、戦前の長期労働契約による人身拘束の弊害を断つため、契約期間を定める場合の上限を1年としていました。
雇用環境が大きく変わる中、平成16年の労基法改正で、契約期間の上限が原則3年となりました。(労基法14条)
■ 3年を超えて契約することが認められる場合とは+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
原則3年までの雇用期間ですが、3年を超えて契約することが認められる場合があります。
土木工事等の有期的事業で、その事業の終期までの期間を定める契約など、事業の完了に必要な期間を定めるものは3年を超えて契約することができます。
■ 博士、医師などは5年契約も可能+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
高度の専門的な知識を有する人との雇用契約の場合と、満60歳以上の労働者を雇い入れる場合は、契約期間を最長5年とすることができます。
博士の学位を有する者、公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士の資格を有する者などが高度な専門的な知識を有する者です。
そのほか、高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者で、年収が1075万円以上の者なども5年契約が可能です。
■ 1年を超える期間契約の注意点+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
期間が、1年を超える雇用契約を結んだ場合、契約の初日から1年を経過した日以降においては、労働者の側からはいつでも退職できるとなっています。(労基法第137条)
使用者側は3年の契約であれば、期間途中での契約解消は原則としてできません。
■ 31日以上の雇用見込みと雇用保険+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
1か月の雇用期間で雇用契約を結ぶ場合でも、雇用保険に入らなければならないことがあります。
雇用保険の加入要件は、
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
雇用保険の手続きをしていないと、退職のときに「失業給付がもらえたはず」とトラブルになってしまいます。
■ 2カ月以内の雇用期間と社会保険+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
社会保険の被保険者の要件は、適用事業所で常用的使用関係にあるかどうかです。
2カ月以内の期間を定めて働く人は社会保険の被保険者となりません。
ただし、所定の期間を超えて引き続き働くことになった場合は、その日から被保険者となります。
2カ月間の雇用契約で、週20時間以上の所定労働時間の場合は、社会保険に加入せず、雇用保険には加入することになります。
■ 2カ月以内の雇用期間と解雇予告+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
労働者を解雇する場合には、解雇予告をしなければなりませんが、2カ月以内の期間を定めて使用される者は除外されています。
2カ月以内の期間を定めていても、所定の期日を越えて引き続き雇用されることになった場合は、解雇予告をしなければなりません。