お知らせ
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作成日:2017/04/02
★★ 研修時間は労働時間? ★★ 



 「研修時間は労働時間になるのでしょうか?」

 会社の管理職研修で労働時間の法規制と36協定の話をしたあとに、受講者か
らこのような質問をいただきました。

 研修というだけでは単純に労働時間かどうかを決められません。

 その判断基準は?


■ 重要ポイント ─────────────────────────

 研修時間が労働時間かどうかは使用者の指示の有無が判断基準となる。

 指示は明示されたものだけでなく、黙示の指示も含まれる。

 平成29年1月20日に出た新しい「労働時間の考え方」のガイドラインでは、参
加が義務付けられている研修や使用者の指示により業務上の必要があって行っ
た学習の時間は労働時間として取り扱うことと明記された。


■ 賃金と労働時間 ─────────────────────────
 
 賃金と労働時間は働く人にとって二つの重要な労働条件ですが、法的には大き
な違いがあります。賃金は最低賃金以上であれば額の決定について、法の規制
はありません。

 労働時間・休日・休暇は、制度の枠組みも基準も、法による詳細な規制があ
る労働条件です。(「労働法」菅野和夫 弘文堂)


■ 労働時間の原則 ─────────────────────────

 労働基準法は以下のように法定労働時間を定めています。

「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働
させてはならない」(労基法第32条)

 労働基準法制定当時は、1週間の労働時間は48時間でした。その後段階的な
短縮を経て、平成9年(1997年)完全に週40時間になっています。(常時10人
未満の労働者を使用する商業、映画演劇業、保健衛生業、接客業については、
1週44時間・1日8時間が認められています)

1日については法制定当時から8時間のまま変わっていません。


■ 労働時間とは実労働時間のこと ────────────────────

 労働時間の長さについては「週40時間を超えて、労働させてはならない」と厳
しい規制があります。労働時間とは会社にいる時間ではなく、実際に労働者が
業務に従事した時間(実労働時間)です。

 労働時間をきちんと把握するようにという行政指導は「労働時間の適正な把握
のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付基発第339
号、通称46通達)をもとに行われてきました。


■ 長時間労働規制の動き ───────────────────────

 長時間労働対策は、第12次労働災害防止計画(平成25年度〜平成29年度)の重
点目標の一つで、継続的に労基署の指導項目となっています。

 また、平成26年11月、「過労死等防止対策推進法」が成立し、平成27年4月に
は、東京労働局と大阪労働局に「過重労働撲滅特別対策班」(かとく)が新設
されました。

 その後平成27年7月24日、「過労死等の防止のための対策に関する大
綱」が閣議決定されました。

 さらに平成28年12月26日には、「『過労死等ゼロ』緊急対策」が公表され、
平成29年1月20日、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に
関するガイドライン」が公表され、46通達は廃止となりました。


■ 労働時間の考え方 ─────────────────────────

 新ガイドラインでは労働時間の考え方の項目が次のように追加されました。

「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用
者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当た
る」として、次のアからウを労働時間として扱わなければならないとしていま
す。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義
務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末
(清掃等)を事業場内において行った時間

イ 使用者の指示があった場合には業務に従事することを求められており、労
働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる
「手待時間」)

ウ 参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使
用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間


■ 労働時間のガイドラインの考え方 ──────────────────

 研修や教育訓練の受講時間が労働時間になるのは、会社の指示があった場合
だけでなく、受けざるを得ないような暗黙の指示があった場合も含まれるとい
うことになります。


■ 自己申告制は例外的に認められる ──────────────────

 自己申告制により労働時間を管理することについては今まで以上に注意が必要
となります。

「実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、ガ
イドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと」が求められま
す。

「入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間のわかる
データを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と
の間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間
の補正をすること」が必要とされています。

 さらには「36協定による時間外労働の時間数を超えて労働しているにもかか
わらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理す
る者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認するこ
と」が求められます。


■ 賃金台帳の調製 ─────────────────────────

 労働基準法108条は賃金台帳を作成し3年間保存することを求め、施行規則で労
働者ごとに労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜
労働時間数を記入することを求めています。

 このことは新ガイドラインにも記載されていて、労働時間数の適正な把握に加
え、正確な記録を徹底することがますます求められることになるといえそうで
す。


■ 新ガイドラインと労働時間 ────────────────────

 新ガイドラインに書かれていることは判例を踏まえたもので、特段新しい解釈
が加わったものはないようです。ただ、黙示の指示を労働時間として具体例を
挙げており、今後労使でトラブルとなったときには労働時間の判断において使
用者に不利になることが多くなると思われます。

 終業時刻後に会社に残っている人には退社するように具体的に指示しなければ、
労働時間といわれたときに反論できなくなるでしょう。


■ 新人研修は労働時間 ─────────────────────────

 研修は参加が強制されていれば労働時間です。新人研修は参加を強制していま
すから労働時間です。

 研修の意図をしっかり伝え今後の業務にいかしてもらいましょう。
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