作成日:2016/07/03
★ 育休トラブルを防ごう! ★
「産前の休みに入る社員がいるので、休暇のしくみやもらえるお金のことなど
説明してもらえないか」
確かにいつどのような手続きをすればよいのか、いつまで休めるのかなど、
出産を控えた女性労働者はお産への期待や不安に加え、休業中のことや職場復
帰について心配が・・・。
■ 重要ポイント ───────────────────────────
産前の休暇に入る前の従業員には、労働基準法や育児休業の規程、社会保険・
雇用保険のしくみをきちんと説明しよう。
復帰の前には復帰後の労働条件について確認し「同意書」を交わしておこう。
■ 妊娠した社員に会社がすべきことは ─────────────────
労働基準法にはいくつかの母性保護の規定があります。
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければなりま
せん。(労働基準法第65条第3項)
妊産婦等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務(重量物の取り扱いや有毒ガスを
発散する場所における業務等)に就かせることはできません。(労働基準法第
64条の3)
変形労働時間制を採用している会社は多いと思いますが、妊産婦が請求した場
合には、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません。
(労働基準法第66条第1項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせることは
できません。(労働基準法第66条第2項、第3項)
また、妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導
を受けた場合は、その女性労働者が、その指導を守ることができるようにする
ために、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなり
ません。(男女雇用機会均等法第13条関係)
■ 産前の休暇はいつからとれるのか ──────────────────
最近は予定日前6週間から休むことが多くなってはいますが、労働基準法では
産前については休業の請求があった場合の就業を禁止していて、働きたいとい
う希望がある場合の就労を禁じてはいません。
産後6週間は請求の有無にかかわらず、休業させなければなりません。産後6週
間を経て8週間までは原則就労禁止ですが、本人の希望と医師の許可があれば
就業させることは差支えないことになっています。(労働基準法第65条第1項、
第2項)
■ 出産手当金はいくらもらえる ────────────────────
出産手当金は健康保険の被保険者本人が出産で仕事を休み給与を受けられない
ときに、出産(予定)以前42日から出産日後56日までの期間、1日につき直近1
2カ月間の標準報酬月額の平均額の30分の1の3分の2が受けられます。
(平成28年3月までは標準報酬日額の3分の2でしたが、改正となっています)
■ 育児の給付金はいくらもらえる ───────────────────
女性の場合は産後休業期間(出産日の翌日から起算した8週間)の翌日から育
児休業が開始となります。原則として子が1歳に達する日(誕生日の前日)の
前の日までが支給の対象の期間です。
休業開始前の賃金日額の67%が6カ月支給され、その後は50%が支給されます。
■ 社会保険料の免除はいつから ────────────────────
社会保険料は産前産後の期間、育児休業の期間とも事業主からの申出により免
除されます。
社会保険料は休業開始月から免除されます。保険料は月単位なので、産前の日
が月の末日でも1カ月免除となります。
産前産後休業の保険料の免除の手続き(産前産後休業取得者申出書)と育児休
業期間の免除の手続き(育児休業等取得者申出書)は別にしなければなりませ
ん。
■ 出産後に会社に提出する書類 ─────────────────────
産前の休業に入る前に、いつから職場復帰したいのか、その時点での意思を聞
いておきましょう。
出産したら出産後1カ月までに会社に「育児休業対象児出生届 兼 育児休業
申出書」で出生の届けと、育児休業の期間をきちんと書面で申し出てもらいま
しょう。
会社は申出に対し、「育児休業取扱通知書」で育児休業の期間を通知し、復職
後の労働条件については以下のように通知しておくようにしましょう。
「復職後の職務については、休業終了日の1ヵ月前までに通知し、説明の上決
定します。復職日の変更がある場合はできるだけ早く連絡してください。」
■ 復帰前に労働条件の書面の確認を ───────────────────
復職後の職務については
「1 育児・介護休業後の勤務は、原則として、休業直前の部署及び職務とす
る。
2 前項にかかわらず、本人の希望がある場合及び組織の変更等やむを得ない
事情がある場合には、部署及び職務の変更を行うことがある。」
と規定していると思います。
休業後、産休前の主任職を外して一般職に降格させるようなことは違法とな
ります。
■ 短時間勤務と労働条件の変更 ────────────────────
復職時に短時間勤務の希望があった場合、短時間勤務を拒否することはできま
せん。
「3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則の所
定労働時間について、午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、正午から
午後1時までの1時間とする。)の6時間とする(1歳に満たない子を育てる
女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる。)。」
のように短時間勤務を認める規定になっていると思います。(育介法第23条)
短時間勤務では対応できない職種や業務内容だった場合に、業務内容の変更
と賃金額の減額幅は注意が必要です。
賃金額が下がったとしても、労働者が不利益取り扱いに同意している場合で、
有利な影響が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなさ
れる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在する
ときは法違反ではありません。
復帰前の1カ月くらい前には復帰後の労働条件について話し合いを持ち、説
明の上「同意書」をとっておくことで、復職トラブルを防ぎましょう。
同意書の内容は次のようにしてはどうでしょうか。
1 〇月〇日、休業後の労働条件について人事部長から説明を受けました。
2 復帰後、残業無で短時間勤務(9:00〜16:00、休憩1時間)の希望を
受け入れていただいたため、顧客対応の必要上残業がある営業部外勤営業から、
過去に勤務経験のある総務部総務課に異動となり、担当業務が××となる事を
了解しました。
3 賃金について〇円に変更となることに同意いたします。
4 勤務時間中は今まで以上に業務に専念することを心がけ、上司同僚と
の報告連絡をよくし、コミュニケーションを密にすることを誓約します。