『月の残業時間が42時間を超える部署があるのですが、36協定はどう書けばよ
いのでしょう?』
こんなご質問を受けました。
このような場合、特別条項付の時間外労働の協定を結ぶ必要があります。
■ 重要ポイント ───────────────────────────
時間外労働が限度基準を超えるときは特別条項を付けた36協定を締結しなけれ
ばなりません。
特別条項には特別の事情がどのようなことなのかについて明記し、限度時間数
や割増率なども記載しなければなりません。
■ 36協定の意味 ────────────────────────────
会社が従業員に残業を命じるためには36協定を結ばなければなりません。
労働基準法第36条は、「使用者は、事業場の過半数労働組合、それがない場合
には労働者の過半数代表者との間で書面による労使協定を締結し、それを労働
基準監督署長に届け出れば、協定の定めるところによって労働者に(法定)時
間外・休日労働をさせることができる」となっています。
残業は「時間外労働・休日労働に関する協定」(通称36協定)を結び、労働
基準監督署長へ届け出をして、初めて認められるのです。
36協定の届け出がなく行われている残業は、残業代が払われていても、違法
な残業ということになります。
■ 36協定に書くことがら ─────────────────────────
36協定には時間外・休日労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、労
働者の数を書き、有効期間の定め(通常は1年)を書きます。
さらに「1日」および「1日を超える一定の期間」についての、延長できる時間
または労働させることができる休日を記載します。
■ 36協定の時間数 ────────────────────────────
「1日」と「1日を超え3カ月以内の期間」さらに「1年間」について上限の時間
数を定めることになっています。
「1日」については限度基準が定められていません。8時間労働で休憩をはさん
で9時間拘束の会社であれば、1日は24時間なので15時間が上限の時間数となり
ます。
急な納期変更、機械トラブルなどで、徹夜が予想されることがあるのであれば、
15時間と書くことになるでしょう。
限度基準により、1カ月は45時間(1年単位の変形労働の場合は42時間)、1年
は360時間(1年単位の変形労働の場合は420時間)となっています。この数字
は厚生労働大臣による告示として定められているもので、限度基準に適合させ
るようにしなければなりません。
■ フレックスタイム制と36協定 ─────────────────────
フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者に委ねる制度です。1日につ
いて延長することができる時間を協定する必要はありませんが、清算期間を通
算して時間外労働をすることあるのであれば、その時間を協定する必要があり
ます。
■ 限度基準の時間を超えるとき ─────────────────────
1年単位の変形労働時間制を採用している会社で、1カ月60時間まで残業が見込
まれる月があったとします。
限度基準の42時間を超えてしまいます。このようなときに、「特別条項」とい
う形で、限度基準を超える事情や、超える残業時間数を付け加えて締結するの
が「特別条項付」36協定です。
■ 特別条項の上限時間の決め方 ─────────────────────
そもそも法定労働時間の中で労働するのが労基法の大原則です。時間外労働を
するのであれば、限度基準の時間内で行うことが例外的に認められています。
そのさらに例外が、限度基準を超えた時間数までの特別条項による時間外労働
です。
特別条項を付けるときは、臨時的・突発的に限度時間を超えて労働せざるを得
ない具体的な事情がある場合にのみ認められるものだということを理解してお
きたいものです。
単に「繁忙期であるため」、「業務上やむを得ないとき」のような事情は特別
条項に記載する事情としては認められません。
■ 特別条項の上限回数の決め方 ──────────────────────
1日を超え3カ月以内の期間の一定期間につき、限度時間を超える時間外労働を
させる回数を、特別条項に盛り込まなければなりません。この回数は1年のう
ち半分を超えないようにしなければならないことになっています。
1日を超え3カ月以内の期間を1カ月と定めるのであれば、6回が上限の回数とな
ります。
■ 限度時間を超える残業の手続き ────────────────────
限度時間を超える時間外労働をさせる場合、どのような手続きを必要とするか
を特別条項に書かなければなりません。
「労使の協議を経る」「使用者が事前に通知する」などが手続きの例です。
■ 割増率の記載も必要 ─────────────────────────
平成22年4月1日以降、限度時間を超えて延長する場合の割増賃金率を記載しな
ければならなくなりました。通常割増率は25%ですが、限度時間を超える労働
には25%を超える率とすることが努力義務として課せられています。25%でも
問題はありませんが、割増率を書かなければなりません。
■ 特別条項による延長時間は何時間までか ───────────────
たとえば特別条項で120時間を6回とし、1年900時間と書いて監督署に提出した
とします。特別条項の限度時間について、規制はないので、受理されます。
法令違反にはなりませんが、この内容は、お勧めできません。
長くても1カ月80時間、それも2カ月連続することのないようにすべきです。
■ 36協定で間違いやすいこと ──────────────────────
36協定は一つの会社に複数の事業所があれば、事業所ごとに締結します。
36協定は事業場の管理責任者(代表取締役や工場長など)と「労働者」の過半
数を代表する者と結びますが、「労働者」には時間外労働割増賃金の支払対象
外である、管理監督者や、パートタイマー、休職者もすべて入ります。
■ まとめ ────────────────────────────────
時間外労働削減が求められている昨今です。
特別条項付き36協定をきちんと検証してみませんか。