作成日:2015/05/18
★ 労使協定を知っていますか ? ★
「年次有給休暇を全部請求されたら困る」
多くの会社の実態のように思われます。そこで私はよく
「労使協定で年次有給休暇を計画的に取得してもらうことができます。取り入
れてみられては。」
とお話ししています。
「スミマセン。そもそも労使協定ってなんでしたっけ?」
そんなご質問をいただきました。お答えします。
■ 重要ポイント ───────────────────────────
労働関係のいろいろな場面で、【労使協定】が求められている。
監督署に届け出が必要な労使協定と、届け出までは求められていない労使協
定がある。
きちんとした手続きで過半数代表者を選び、労使双方の約束事である労使協
定は遵守しよう。
■ 労使協定の定義 ──────────────────────────
使用者(一般的には会社)と労働者の過半数を代表する者との間で結ぶ書面に
よる協定を「労使協定」といいます。
単なる働いている人の代表ではなく、「過半数を代表する者」と会社との間で
締結する必要があります。
■ 労基法と労使協定 ─────────────────────────
労働基準法は「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合」、そのよう
な組合がない場合には「当該事業場の労働者の過半数を代表する者」との書面の
協定がある場合に、同法の規制の一部について免れることができるとしています。
■ たとえば36協定 ─────────────────────────
労働時間について労働基準法は「1週間について40時間を超えて、労働させて
はならない」(第32条第1項)「1日について8時間を超えて労働させてはならな
い」(第32条第2項)と定め、休日については、「毎週少なくとも1回の休日を
与えなければならない」(第35条第1項)と定めています。
ところが、第36条で、労使協定を結んで、行政官庁に届け出た場合においては
労働時間を延長したり、休日に労働させたりできるとしています。
このように、労使協定を結ぶことで、法規制を免除してもらうことができる
のです。
■ 労働基準法は刑罰法規────────────────────────
労働時間の規制である第32条に違反した場合、「6箇月以下の懲役又は30万
円以下の罰金」という厳しい罰則(第119条)があります。
労使協定を結ぶことでこの罰則が適用されないというのです。法の求める労使
協定は、過半数代表者の選出方法や協定の内容について厳格なキマリがあるのも
当然といえることなのです。
■ 部長は過半数を代表する者になれない ────────────────
管理的な立場にある人がもし過半数代表者になってしまったら、一般の労働者
の意見は通りにくくなってしまいます。部長などの立場にある人は、過半数代表
者にはなれません。
労働者の過半数を代表する者は「36協定を結ぶので、労働者代表を選出しま
す。挙手してください」などの方法で選出することが求められています。
使用者の意向で選ぶことは避けなければなりません。
■ 届け出が必要な労使協定 ─────────────────────
労働基準監督署に届け出が必要な労使協定は「時間外・休日労働」(第36
条)のほか、
1年単位の変形労働時間制(第32条)、事業場外労働の労働時間の算定(第
38条)、専門業務型裁量労働の労働時間の算定(第38条)などがあります。
■ 届け出が要らない労基法の協定────────────────────
賃金の控除協定(第24条)、フレックスタイム制(第32条)、年次有給
休暇の計画的付与(第39条)などは行政官庁への届け出の必要がありません。
■ 労基法以外の労使協定 ───────────────────────
育児・介護休業の対象者は、労使協定を定めることにより除外できるケース
があります。(育児介護休業法6条1項但し書、育児介護休業法12条2項)
■ 労働者代表への期待 ───────────────────────
労働者の過半数を代表する人とは、従業員同士の中で一番信頼されている人
ともいえます。
キチンとした手続きで代表を選び、労使協定を締結することで、労使の関係
はより良いものになり、協定が実のあるものになるのではないかと思われます。
年次有給休暇の取得も、労使協定で取得方法を明確にして、計画的に推進さ
れてはいかがでしょう。
★★ 意外と知らない労働法の基本知識。
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