70歳過ぎても社会保険に加入し続けて働く従業員は増えていると思います。
代表取締役や取締役であれば、70歳過ぎて社会保険に加入し続ける方は少な
くありません。
社会保険の手続きでは70歳以上の方について、特別の届け出が求められてい
ます。
どんな届出がなぜ必要なのでしょう。
■ 重要ポイント───────────────────────────
70歳になると厚生年金保険料を負担しなくてもよくなります。
ただし、報酬額によっては年金が減らされる仕組みです。
そのため、70歳以降の方について会社は、算定基礎届や賞与支払時に、特別な
用紙で報酬の確認が求められています。
■ 厚生年金加入者が70歳になると────────────────────
厚生年金に加入している従業員や役員が70歳になると、厚生年金保険料の負担
がなくなります。
「厚生年金被保険者資格喪失届」という届け出を出し、厚生年金の被保険者で
はなくなります。資格喪失でも退職したのではなく、70歳到達により、厚生年
金被保険者の資格だけ喪失したという手続きで、健康保険料の負担は続きます。
■ 70歳の資格喪失日に注意────────────────────────
70歳に達した日(誕生日の前日)が資格喪失日です。
4月1日生まれの方は3月31日が資格喪失日となり、3月分から厚生年金保険料負
担がなくなります。4月2日生まれの方は、4月1日が喪失日で4月分から負担し
なくてよくなります。
■ 在職老齢年金の仕組み─────────────────────────
老齢年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てです。
65歳になると1階部分の老齢基礎年金は報酬にかかわらず支給されます(お金
持ちも基礎年金は減額されません)が、2階部分の老齢厚生年金は減額される
ことがあります。この仕組みは70歳過ぎも続くのです。
70歳過ぎると厚生年金の被保険者ではなくなるので、報酬額を別途申告しても
らって支払う年金の調整をするのです。
■ 働いていると70過ぎても満額もらえないのが年金────────────
仮に老齢厚生年金(基礎年金は除く)が月額10万円で、報酬が30万円(賞与な
し)としましょう。この場合、年金減額はなく、10万円の年金はもらえます。
年金の月額と報酬月額(賞与の支払いがあればその12分の1もたす)を足して
46万円にいかないからです。
もし報酬が50万円(賞与なし)で、本来もらえる年金が月10万円だったと仮定す
ると、年金月額と報酬月額は60万円となり、46万円を14万円超えてしまいます。
この場合、14万円の半額の7万円が年金から減額され、3万円となります。
46万円という国が定めたハードルのため、報酬月額が56万円以上なら、本来も
らえる年金の10万円は全くもらえません。
70歳を過ぎると厚生年金保険料の負担はなくなりますが、受給している年金額
の調整(減額や支給停止)のため、報酬に関する書類提出が求められているの
です。
■ 70歳以上の方の厚生年金の手続き──────────────────
70歳になったら「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を出します。
70歳以上の方が離職のときは「厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を出し
ます。
算定基礎のときは「厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届」が必要です。
月額変更では「厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届」、賞与支払い時には
「厚生年金保険70歳以上被用者賞与支払届」を提出します。
賞与の支払額も、年金減額に影響するので、届け出が求められているのです。
■ 75歳になると───────────────────────────
70歳から75歳までは厚生年金保険負担なし、健康保険のみの負担ですが、75歳
になると健康保険の資格喪失をします。
75歳以上は元気に働いていたとしても、都道府県の広域連合が運営する、後期
高齢者医療制度の被保険者になるからです。
■ まとめ ───────────────────────────
複雑になる一方の社会保険の手続き。
70歳以上の被用者の手続きは年金制度の改正により、平成19年4月から求めら
れているものです。
社会保険制度の仕組みを理解して、間違いのない手続きをしたいものです。
作成日:2014/07/14
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