作成日:2014/01/13
★ 傷病手当金を正しく知ろう! ★
「傷病手当金は請求しないのですか?」
従業員が、うつ状態になり、会社を休みはじめ2か月後に退職届を郵送して
きました。
休んでいた期間について傷病手当金の請求ができるのですが・・・
■ 重要ポイント───────────────────────────
傷病手当金の制度は、健康保険に加入している大きなメリット。
時効は2年ですが、正しく知って忘れずに申請しましょう。
■ 個人から法人になったとき────────────────────
その会社は、昨年4月に個人経営から法人の経営に替えて、社会保険に加入
しました。加入にあたり、社長から求められ、社会保険の説明会を従業員にい
たしました。
社会保険に加入すると、給与の手取りは減るけれど、今までの国民健康保
険・国民年金と違って、メリットもあります。健康保険には、国民健康保険に
はない傷病手当金の制度があります。など。
■ 傷病手当金の受給の要件──────────────────────
傷病手当金は、労災保険の対象にならない病気やケガにたいして支給され
るもので、次の4点をすべて満たしていることが受給の要件です。
(1) 病気やケガで、療養中であること
(2) その療養のために休業し、仕事を休んでいること
(3) 連続した3日の待期(休業)があること
(4) 賃金がまったく支給されないか、または賃金が減額されていること
■ 医師の証明が重要──────────────────────────
傷病手当金には、療養担当者が意見を記入するところがあります。
療養担当者(通常は医師)に、傷病名と療養のため就労できなかったと認め
られる期間、症状および経過、労務不能と認められた医学的な所見を記入して
もらいます。
精神疾患ももちろん対象になります。入院期間だけではなく自宅療養の期間
も、就労できないと認められることが多いです。
■ いくらもらえるのか─────────────────────────
傷病手当金は休業1日につき標準報酬日額の3分の2が支給されます。
標準報酬日額は標準報酬月額を30で割って出します。
30万円の標準報酬月額なら標準報酬日額は10,000円。その3分の2は6,667円。
1日の休業に6,667円が支給されます。もともと会社の休日であっても支給対象
となります。
仮に標準報酬月額が30万円で、60日が傷病手当金の対象期間だとすると、
400,020円が、もらえることになります。
■ 在籍していれば社会保険の負担はある────────────────
会社は病気で休んでいる社員に賃金を払わなくても、在籍していれば、社会
保険の負担をしなければなりません。30万円の標準報酬月額では、健康保険料
と厚生年金保険料を合わせて、会社負担が1か月約4万円、本人負担も同額とな
ります。
■ 休業に入るときに社会保険料、傷病手当金の説明をすべき───────
今回のケースでは、従業員が前ぶれなく休み、医師の診断書とともに休業願
いが送られてきました。
休業の期間や、賃金のこと、社会保険料の負担や傷病手当金について具体的
に説明することができませんでした。
本来であれば、どのような病気の症状で、どのくらいで回復が見込まれるの
かなども含め、話し合いがもたれるべきでした。
■ 退職後の給付───────────────────────────
傷病手当金は退職後の期間であっても労務不能であれば受給できます。
(この場合、事業主の証明は要りません)
ただし、引き続き1年以上被保険者だった人が資格を喪失した場合という要
件があります。
今回のケースでは、この1年以上を満たしていないので、退職後の労務不能
の期間に対しては、傷病手当金は受給できません。
本人からの請求が無く、連絡が取れない状態なので、現在は在籍中の申請可
能期間について傷病手当金の申請をしていません。請求の時効は2年ですので、
本人と連絡がつくようになったら、傷病手当金の請求を勧めてはいかがでしょう。
★★ 申請しなければもらえない社会保険の給付、ウッカリがないように
したいものです。