作成日:2013/09/02
★ ブラック企業にメス?! ★
去る8月8日、厚生労働省は、長時間労働など過酷な労働を強いる企業への集中的な取締りを実施する、9月を「過重労働重点監督月間」とすると発表しました。
厚生労働大臣は「ブラック企業といわれる企業をなくしていきたい」と語りました。
どのような取締まりが行われるのでしょうか。
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
ブラック企業を重点的に取締まると報道されました。
長時間労働が当たり前になっていたりしなければ、問題ありません。
■ いわゆるブラック企業 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「いわゆる『ブラック企業』が大きな社会問題となっている。政府の成長戦略でも若者の活躍推進をあげているが、こうした問題を野放しにしていては日本の将来はない。『ブラック企業』といわれるような企業をなくしていきたい」厚生労働大臣の発言です。
若者の使い捨てが疑われる企業、4000社をリストアップし、9月、立ち入り調査に入ると報道発表(厚生労働省のホームページで確認できる)されました。
■ 「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」
大臣も口にしたブラック企業という言葉、何か法律を犯して悪いことをしている企業のイメージですが、どうでしょう。
2009年、過酷な労働環境の会社で働く若者が主人公の「ブラック会社に勤めて
るんだが、もう俺は限界かもしれない」というタイトルの映画が公開され、ブラック会社やブラック企業という言葉が若者を中心に広まったようです。
■ ブラック企業の定義 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
ブラック企業の明確な定義はありません。
「法律に反した、または、法の趣旨に反した労務管理によって労働者の生存権を脅かす人権侵害を行い、こうした労働者の使い捨てによって利益を上げることがビジネスモデルとなっている企業」
(『マンガでわかるブラック企業』竹信三恵子 解説文)という人がいます。
また、次の5つをブラック企業の特徴にあげている人もいます。
(1)大量採用し、仕事が出来ると判断した社員を残して、他の社員は使い捨てにする
(2) 長時間労働をさせる上に、残業代などの正当な賃金を払わない
(3) 法律で定められた労災保険、雇用保険、社会保険に加入させない
(4) セクハラやパワハラがあっても会社は放置する
(5) 会社側が不要と判断した社員に圧力をかけて、自己都合退職に追い込む
(『うちの職場は隠れブラックかも』松沢直樹)
■ ブラック企業の取締り +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
過酷な長時間労働を強いる会社、健康や人権が侵害されている会社をなくていこう、という政府の取り組み姿勢は理解できますが、この9月に行われようとしていることはどんなことなのでしょう。
■ どのような調査か +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
厚生労働省の報道発表資料によると、具体的な取り組みとして、『長時間労働の抑制に向けた集中的な取り組みを行う』となっています。
これまでも労働基準監督署は、労働基準関係法令の違反に対し、監督指導を行っています。長時間労働についても、36協定の時間を超える時間外労働がないか、調査取締りの対象としてきました。また、サービス残業については、賃金不払い残業とし、違法な残業であることを広報してきています。
■ 今までの調査との違い +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
9月に行われる調査取締りについて、労働基準監督署とハローワークが連携して調査という報道が目を引きます。
連携の一つ目は、監督署及びハローワーク利用者からの苦情や通報をもとに、
離職率が極端に高いなどの若者の「使い捨て」が疑われる企業等を把握し、監督指導を集中的に実施するとしていることです。
二つ目はその監督指導の結果、法違反の是正が図られない場合は、是正が認
められるまで、ハローワークにおける職業紹介の対象としないとしている点です。
■ これまでの監督署の調査 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「いつも帰宅が10時、11時なのに残業代が支払われていない」
「休みもない過酷な労働を強いられ、疲労がたまり、精神的にも参っている」
もしこのような苦情が、働いている人本人や家族から労働基準監督署に寄せられた場合、法令違反が疑われますから、監督署は実態を調査、是正を求めます。
是正されない場合には、再監督ということもありますし、さらに是正されない場合や偽った是正報告がされるなど悪質な場合には送検ということもあります。
これは労働基準法や安全衛生法という法令を遵守していく仕組みとして確立しています。
■ ハローワークとの連携方法は不明 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
退職したとき、多くの退職者は失業給付の受給のため、離職票を会社に書いてもらいます。離職票には離職理由の記載欄があります。
もし「36協定を超えるような長時間労働があった」という理由で退職したような場合は、単純な自己都合退職ではなくなります。まじめにきちんと働きたいのに、会社の就労環境に問題があっての退職だと判断され、失業給付を受けるときに、退職者には有利になります。
たとえばこのような情報が監督署にも提供されるのでしょうか。
■ ハローワークは求人の申し込みを拒否できない+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
36協定を超える時間外労働が行われていることが監督署の調査で指摘された合、一定の期間までの是正が求められます。法違反が是正され、報告がなされると通常はそれで終わりですが、今回厚労省は、「監督指導の結果、法違反の是正が図られない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける職業紹介の対象としない」としています。
いつの時点でハローワークの求人がストップしてしまうのでしょう。
求人の申し込みの内容が法令に違反しない限り、ハローワークは求人の申し込みを拒否することができないというのが職業安定法なのですから。
連携の行き過ぎが懸念されます。
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