作成日:2013/03/01
★ 契約社員の処遇は? ★
「うちの会社には、働く時間も働く日数も正社員と同じで、1年契約を繰り返している従業員(契約社員)が複数いる。もちろん、社会保険には入っているし、契約書もきちんと交わしている。 心配なのは4月から労働契約法が変わるということ。今後はどのように処遇していけばよいのだろうか・・・」 グループ会社の間で人事の異動があったり、合併があったりで、このようになっているといいます。 まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓ ■ 重要ポイント+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
平成25年4月から労働契約法が改正されるとはいえ、直ちに今の契約社員との労働条件を変える必要はない。ただ、長期的には正社員転換の制度を設けていくべきであろう。 ■ 35%を超え、過去最高の非正規割合+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 総務省統計局は2月19日、労働力調査を発表しました。 役員以外の雇用者のうち非正規労働者の割合は前年より0.1ポイント増の35.2%と3年連続で過去最高を更新しました。雇用者は5154万人で前年に比べ9万人の減少で、そのうち、正規の職員・従業員は12万人の減少なのに対し、パートやアルバイトなどの非正規労働者は2万人の増加でした。 男女別で見ると非正規の約7割が女性となっています。 また女性は非正規と正規が約半々の割合ですが、年代別で割合に差があることに特徴があり、25〜34歳では非正規4割、正規6割と正規割合が高いですが、年齢が上がると次第に非正規割合が高くなっています。 冒頭の会社も期間契約を繰り返している方は女性でした。 ■ 非正規社員とは+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 前掲の労働力調査では、「勤め先で正規の職員・従業員と呼ばれている」従業員を正規従業員としています。それ以外の「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員・嘱託」「その他」と呼称される人を非正規として統計をとっています。 労働時間が短いからとか、期間の定めがある契約だから非正規社員というのではなく、【勤め先での呼称】によって、正規と非正規を区分しています。 ■ 正規社員の特徴+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 一般的には正規社員(正社員)であれば長期の雇用が保証され、昇給があり賞与が支給され、退職金があるイメージですが、サービス業の従事者が増えていて、昇給・賞与、あるいは退職金がない正規社員も多くいます。また年収で非正規を上回るから正社員ということもいえないでしょう。 では正社員とはなぜ正社員と呼ばれるのでしょう。 正社員の特徴は以下の5つあると考えられます。 (以下は「非正規社員の法律実務第2版 中央経済社」より引用) (1) 正社員の呼称で雇用される (2) 基幹的・恒常的業務がある企業に直接雇用された者である (3) 契約期間の定めがない (4) フルタイム労働する (5) 一定の待遇保障と継続的教育研修を受ける パートタイマーは上記(4)の点が欠け、有期契約労働者は上記(3)の点が欠け、派遣労働者および業務処理請負(構内下請)として就労する労働者で上記(1)の要素がある者についても、上記(2)の点が欠けることから、これらはいずれも非正規社員といえます。 ■ 非正規で正規の替わり+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 昭和59年頃、雇用者に占める非正規の割合は15%でした。平成に入って2割を超え、平成15年以降3割を超えるようになり、現在の3割5分以上となっています。 平成二桁代は、正社員を雇用するにはコストがかかるため、その替りに、正社員とほぼ同じ労働時間で働く有期契約労働者や、派遣労働者が増えたと考えられます。 非正規雇用の労働者が若年層を中心に増加し、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発の機会が少ないといった問題が出てきています。 ■ 非正規を保護する法改正+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 有期労働契約が5年を超えて反復・更新した場合、労働者は無期労働契約に転換させる仕組みが労働契約法の改正で導入されます。 (法改正について http://sr-onomoto.jp/letter/000178.php )
また、派遣法の改正(派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置が努力義務化される)、高年齢者雇用安定法の改正も非正規社員の保護に向けた動きと考えることができます。 ■ 正規と同じ仕事と時間の契約社員+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 冒頭の会社は、正規社員として雇用する予算枠がなく、とりあえず契約社員として採用し、1年の期間雇用を数回繰り返してきたようです。 ■ 期間の定めのない労働契約にしたくないなら+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 有期労働契約が反復更新を経て5年を超えた場合には、その労働者に無期転換点の申し込み権が発生し、申し込みをされた場合使用者はその労働者を無期雇用者として雇うことが義務化されます。(改正労働契約法) もし期間の定めのない契約への転換をしたくないのであれば、有期契約労働者の就業規則は以下のようになるでしょう。 (契約の期間および更新) 第□条 有期労働契約はその契約期間を1年とする。 2 前項の契約については、契約期間満了時の会社の業務量、当該契約社員の勤務成績、能力等を考慮の上、更新する場合がある。 3 前項の更新は4回を限度とする。 ■ 正社員に転換する仕組みを設けるなら+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 無期労働契約への転換ルールは、有期契約の労働者の雇用の安定を図ることを目的としています。 無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。賞与や退職金の仕組みがある正社員と同じような労働条件にしなければならないものではありません。 ただ、正社員登用制度を導入することができれば、契約社員のモチベーションを上げることができるでしょう。 ■ 助成金の活用+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 現在、期間の定めがある契約社員や、勤務時間の短いパートタイマーに、正社員(期間の定めのない社員)に転換する制度を作った場合で、正社員転換後6か月たつと助成金が受給できます。 この均衡待遇・正社員化推進奨励金は平成25年3月31日をもって廃止されます。 代って有期・短時間・派遣労働者等キャリアアップ助成金が創設される予定です。 既存の関連助成金・奨励金を統廃合するとともに、メニューを刷新し、非正規労働者の企業内でのキャリアアップを包括的に後押しする助成金だといいます。 助成金を活用しながら、一定の選考試験に合格した場合に正社員に登用するという仕組みを作ることも検討すべきかもしれません。 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-★ あとがき ★+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 契約社員・パートタイマーといった違いに応じた雇用管理をすることがますます重要になります。