作成日:2010/07/19
★ 監督署が受け付けたので完璧? ★
「この就業規則は受付印があります。従業員にもちゃんと見せています!」
人事部長さんが自信を持っておっしゃいました。
それはそうかもしれませんが・・・
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
監督署の受付印のある就業規則は、内容まで適切であることを保証してはい
ません。
■ 監督署は就業規則を受け付けるのが仕事+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官
庁に届け出なければならない。変更した場合も同様とする。」(労基法第89条)
従業員の意見書を添えて就業規則の届出をすれば、監督署の担当職員はたい
ていそのまま受け付けてくれます。
また、郵送による受付もよく行われています。
ですから、監督署が受け付けてくれたので内容に問題がないということにはな
りません。
法定休日が確保されているか、始業終業時刻が書かれているか、法定の労働
時間を上回るような長い労働時間を定めてはいないかなどの必ず書いておかな
ければならない事項についてはチェックされることはありますし、問題があれ
ばあとから問い合わせが来ることはあります。
受付印があれば、一応、法違反はない就業規則だということにはなります。
■ 就業規則の意味+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
就業規則は会社の憲法ともいわれるもの。大事なキマリを定めたものです。
就業規則の内容が合理的であれば(=無茶なことを定めていなければ)その内
容に同意していない従業員や、内容を知らされていない従業員も拘束します。
会社の全従業員の最低の労働条件を決定します。
■ 従業員がうつ病になったら・・・+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
就業規則が問題となるのは、従業員がフツウに働いてくれないことがおきた
ときです。
たとえば・・・
健康そのものと思っていた従業員が、遅刻しがちになり、しばしば欠勤する
ようになった。そして思いがけない「うつ病」の診断書が提出された。
このようになってはじめて就業規則の休職規定を見てみることになります。
「1ヵ月以上欠勤が続いたとき」に休職に入る、だったら、遅刻ばかりする、
来たり来なかったりする従業員を休職扱いにすることもできません。
また、仮に休職を命じることができたとしても、入社したばかりの従業員で休
職期間が「3年間」だったら・・・どうでしょう。
小さな会社では働いている従業員から不満が出ることにもなりかねません。
監督署の受付印があると安心していた就業規則が、会社にとって大きな負担を強
いるものになっている可能性は大きいのです。
■ 会社にとって大事なことは監督署がチェックしない+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
休職の定め、解雇規定、退職金規定、服務規律などは会社にとって大変重要
な規定です。
ところがこれらは会社が自由に決めればよいこと、つまり、労働基準法には
基準のないことなので、監督署はチェックもしません。
会社と従業員が自由に決めていい事柄について、行政がとやかく口を挟むこ
とはできないのです。
■ 届出より重要なこととは +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
もちろん労基法を遵守して就業規則を届出ることは重要です。
けれども、届出は行政の手続きを行ったということであって、会社が安心でき、
いざというとき会社が困らない内容の規則かどうかとは関係がありません。
もし、従業員がうつ病になったら、もし、従業員が飲酒運転をしたら・・・
そんなときにどう処遇してよいかわからない就業規則では困ります。
トラブルが起きてから、該当箇所をよく読んでみると、判断基準があいまい
だったでは困ります。
受付印があるからと安心してはいけないのです!