「法律上、最低限度備え付けておかなければならない書類があるのでしょう?
わからないので教えてほしい」
設立して間もない、小さな会社の経営者からこんな質問を受けました。
作ったばかりの会社だからとか、従業員がたった一人だからという例外なしに、備え付けておかなければならない帳簿というものがあります。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
労働者名簿と、賃金台帳は必ず作成しておかなければならない書類です。
賃金台帳の記載事項、意外と漏れがある会社が多いのですが・・・。
■ 労基法と法定帳簿+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
労働基準法では、労働者名簿と賃金台帳の調製と記録の保存を義務付けています。(第107条、第108条)
労働基準法はすべての使用者が必ず守らなければならない法律です。
労働者を雇っている使用者は、事業規模が小さくても、会社組織ではなく個人事業でも、また、フルタイム勤務者のいないパート労働者だけの事業所でも、法定の帳簿は作成し、一定の期間保存しておかなければならないというキマリです。
■ 労働者名簿とはどういうもの?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
労働者名簿は各労働者について調製し、氏名や生年月日を記入しなければならないものです。
(調整ではなくあまり使わない調製という字です。)
労働者名簿には氏名、生年月日のほか、性別、住所、履歴、雇い入れの年月日、退職の年月日及びその事由、死亡の年月日及びその原因を記載しなければなりません。
さらに、30人以上の事業所の場合は、従事する業務の種類も記載します。
記載事項に変更があった場合、遅滞なく訂正しなければなりません。
ですから、「引越しをしました」と従業員から連絡を受けたときは、労働者名簿の住所記載欄も訂正しておく必要があります。労働者名簿は独立したものである必要はなく、賃金台帳と合わせて調製することが認められています。
■ 賃金台帳とはどういうもの?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
労働基準法は、賃金台帳を作成して、以下の事項を必ず記載することを求めています。
(1) 氏名
(2) 性別
(3) 賃金計算期間
(4) 労働日数
(5) 労働時間数
(6) 時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数
(7) 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
(8) 賃金を控除して払ったときは、その額
気をつけなければならないのは、(4)(5)(6)(7)です。つまり、時間外労働や、休日出勤を命じたときには、その時間数を書き、時間外労働手当や休日労働手当の支払い額を記入しなければならないとされていることです。
ちなみに、所得税額計算の資料である、源泉徴収簿は毎月の源泉徴収税額の記録と年末調整が目的です。労働時間数や労働日数の記載は求められていません。
賃金台帳は、労働の実績と支払い賃金との関係を明らかにするために求められている、たいへん重要な帳簿といえます。
■ そのほか記録・保存しておかなければならない書類は?+-+-+-+-+-+-+-+-+
労働者名簿、賃金台帳のほかにも以下の書類の記録と3年間の保存を労働基準法は求めています。
(ア)雇い入れ、退職に関する書類
(イ)災害補償に関する書類
(ウ)賃金その他労働関係に関する重要な書類
出勤簿やタイムカードは、賃金その他労働関係に関する重要な書類に入ります。
■ 法定帳簿を備えないと罰則もある+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
これらの法定の帳簿を記録せず、また、3年間の保存をしていなかった場合は、30万円以下の罰金に処せられる(第120条)ので、おろそかにはできません。