「社会保険事務の総合調査を実施させていただきたい」
年金事務所からこんな通知が届き、調査指導を受けることがあります。
「今後は、4年に1回程度、調査させていただく予定」と新潟東年金事務所の適用調査課。
社会保険の調査にはどう備えればよいのでしょう。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
社会保険の資格取得の時には残業見込み額も入れること、賃金の変動があったときには3カ月後に注意が必要なこと、たびたびの社会保険料のアップで保険料控除額を間違いやすいことなど、社会保険事務担当者には細心の注意が求められています。
■ どのような書類を見せなければならないのか+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
調査の依頼があったときに、「当日ご用意していただくもの」として求められるのは以下の書類です。
(1) 労働者名簿、雇用契約書
(2) 源泉所得税領収証書
(3) 賃金台帳、賃金支給明細書(2年前から直近分まで)
(4) 出勤簿またはタイムカード(2年前から直近分まで
(5) 社会保険関係の各種決定通知書の事業所控え分
(6) 就業規則(労働協約)及び給与規則
■ 社保の調査役は公務員?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
社会保険の調査をするのは年金事務所の職員。彼らは特殊法人である日本年金機構に所属し、身分は公務員ではありません。日本年金機構は、国(厚生労働大臣)から委託・委任を受け、平成22年1月から社会保険庁にかわって、公的年金にかかる業務を行っています。
■ 加入日は正しい?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
本当は4月1日から働いていたのに、社会保険の届出が7月1日となっていたとしましょう。賃金台帳と出勤簿、雇用契約書をみてその事実が確認されたとすると、4月1日にさかのぼって、取得年月日の訂正を求められます。
■ 加入日の給与は正しい?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
資格取得するときは、給与の見込み額を届けることになっています。
基本給だけでなく、通勤手当や住宅手当などの定期的な諸手当を入れなければならないのはもちろんですが、残業が見込まれる場合は残業代も加えなければなりません。
残業はないと思って資格取得届を出したが、残業があったということもあるでしょう。その場合、3カ月間の給与の平均をとってみて、標準報酬月額等級で2等級以上の差があったら、資格取得時訂正をしなければなりません。
■ パートの加入漏れはない?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
気をつけなければならないのは、パートタイマーの加入漏れです。もちろん、時給のパートだからは加入しなくてよいということにはなりません。
次の(1)及び(2)のいずれにも該当する場合は原則として被保険者です。
(1) 労働日数:1ヶ月の所定労働日数が一般社員のおおむね4分の3以上である場合
(2) 労働時間:1日又は1週の所定労働時間が一般社員のおおむね4分の3以上である場合
■ 月額変更届は出ている?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
社会保険の保険料は、
(1) 入社したときの資格取得時の決定
(2) 毎年7月の報酬月額算定基礎届による決定
(4,5,6月の報酬の平均で、9月から翌年8月まで有効となる)
のほか、報酬が大幅に変動したときに行う、随時改定(月額変更届)があります。
154,000円の報酬月額だった人が6月に昇給(固定的賃金の変動)があって、165,000円になったとします。6,7,8月と165,000円の報酬が払われたとすると、9月に月額変更届を出さなければなりません。
154,000円は標準報酬月額が15万円で、165,000円は標準報酬月額が17万円。2等級の差があるからです。
昇給でなく、引越しをして通勤手当が増えたという場合も、固定的賃金の変動ですから、月額変更届を出さなければならなくなる場合があります。
固定的賃金が減ったという場合も、2等級以上の差があれば、月額変更届を行わなければなりません。
■ 賞与の届出は出ている?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
賞与を支払ったとき、賞与支払届により、一人ひとりの賞与額を届け出なければなりません。
■ 退職日と保険料は合っている?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
退職したときの出勤簿と、賃金台帳により、退職時の保険料の引き間違いはないかも調査されます。
1月20日退職なら、保険料は12月分までです。1月30日(月末日の前日)退職も12月分までです。 1月31日(月末日退職)であれば、資格喪失は翌日の2月1日なので、1月分まで保険料の負担があります。
■ 傷病手当金の請求は正しい?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
給与が支払われているのに傷病手当金や出産手当金を受給してることはないかも調査されます。
■ 間違いが指摘されると?+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
調査は2年間さかのぼってなされます。
加入漏れが指摘された場合、社会保険料の支払いをしなければならなくなることに加え、加入漏れの期間に医療機関にかかっていた場合は、医療費の精算をやり直さなければならなくなります。
■ 個人事業の4人以下はフルタイムでも加入義務なし+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
法人の事業所であれば、従業員を雇わずに、常勤の役員が一人という事業所でも社会保険に加入しなければなりません。
個人の事業所で5人未満、または、5人以上でもサービス業の一部や農林漁業などの非適用業種の事業所に社会保険は強制されていません。
法人事業所の加入促進の業務は外部委託(民間の会社に委託)され、いっそうの適用拡大を推進するといいます。(新潟東年金事務所)
■ 最後に +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
また3月から健康保険料が上がります。今後も上がり続けるでしょう。
大変な負担を強いている社会保険料なのですから、安定し安心できる社会保障制度であってほしいと強く願わずにいられません。