「新しい給与ソフトの説明書を読んでいたら、代替休暇という言葉がありました。 それによると、
『「代替休暇とは月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の支払に代えて半日、又は1日単位で取得できる有給の休暇。但し、労使協定の締結が必要。』
とありました。
うちの会社は1カ月60時間を超える時間外労働は、まずありませんが、給与計算を間違うといけないので、どういう休暇なのか知りたいのですが・・・」
こんな質問を受けました。
代替休暇とは平成22年の労働基準法の改正のときに新しくできた休暇です。
取り扱いがややこしく、私の周りで代替休暇制度を作っているという事例は聞いたことが無いのですが、どんな休暇なのでしょう。
まずは、本日の結論から ★多忙な方はここをチェック★★↓↓
■ 重要ポイント +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
代替休暇は60時間を超える長時間労働があった場合に、50%という割増に替えて付与される休暇のこと。
中小企業には50%割増も代替休暇もまだ猶予されています。
■ 割増賃金が50%なる法改正+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「長時間労働がなかなかなくならない。長時間労働をどうしたら少なくすることができるか」ということで考え出されたのが、割増賃金の率を上げるという制度です。
【時間外労働が月60時間を超えたら、その超えた時間について、50%以上の割増賃金を支払わなければならない。】
このように法改正がありました。ただし今適用されているのは大企業だけで、中小企業は適用されません。
■ 50%割増の趣旨は、長時間労働を減らすこと +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
時給1,000円の人がフツウに残業したら1,250円。60時間を超える残業だったらなんと1,500円。大変大きな割増賃金です。
ただ、法の趣旨はあくまでも長すぎる労働時間を減らすことです。
そのため、従来の割増の1,250円を支払うなら、上乗せの250円分は、お金を払わずとも休ませることでよいとしましょうというのが、代替休暇です。
■ 事例で考えると+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
時給1,000円の人に1カ月76時間の時間外労働があったとします。
60時間を超えた16時間に50%増の賃金を支払わなければなりません。
代替休暇制度をとれば、16時間に対して50%増の1,500円を支払わず、1,250円だけ支払って、残りの250円は相応の休暇で替えることができるのです。
この場合、250円×16時間=4,000円です。4,000円の支払いに代えて、 16時間×0.25=4時間となりますから、4時間の休暇を与えてもよい、これが代替休暇の具体的な一例です。
■ 代替休暇には労使協定が必要 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
50%割増を支払わずに休暇で替えるには労使協定を結んで、細かな取り扱いを決めておかなければなりません。
(1) 代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法
(2) 代替休暇の単位
(3) 代替休暇を与えることができる期間
などを、労働者代表と労使協定で定めます。
■ 就業規則には明記すること+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
代替休暇に関する事項は、「休暇」に関する事項ですから、労使協定で代替休暇を与えることとした場合には、就業規則にもその内容を記載する必要があります。
■ 実務的にはややこしい代替休暇+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
代替休暇の単位は、1日又は半日とされていますが、3時間だったり、7時間だったりしたらどうするのか。
代替休暇を付与するのは長時間の時間外労働をした月から近くなければ意味がありませんが、また忙しくてとれなかったらどうするのか。
代替休暇がとれず、やはりお金で払うにはいつ清算するのか。
などなど、代替休暇をとりいれるのはなかなか面倒なことだと思います。
■ 中小企業の猶予 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
中小企業には
(1) 月60時間を超える時間外労働について割増率50%は猶予されています。
(2) 割増賃金の支払いに代わる代替休暇も、適用が猶予されています。
とはいえ、給与計算は間違いが許されない業務です。
知らない言葉にあうとドキッとしてしまいますが、中小企業には当面、猶予ですから心配しなくともよさそうです。